スターキーは正直に告白します。
今まで補聴器は音楽も会話音も同じように処理してしまっていました。
そして、今も多くの補聴器は自ら築いてきたその技術の檻から抜け出せずにいます。
補聴器メーカーはより会話音をクリアな音質で届ける努力を続けてきた一方で、実にその努力は音楽を楽しむ方にとって、その明瞭さや音質を犠牲にすることにつながっていたのです。
今まで音楽を楽しんできた補聴器ユーザーは不満を口にしていました。
「大好きな音楽が聞こえてこなくなってしまった・・・」
「音楽は遠くでかすかに聞こえる程度。。。補聴器をつけたら仕方ないのかな。。。」
「カラオケが下手になった。自分の声とBGMが合わせて拾えなくなってしまった。」
「補聴器をつけたらテレビが面白くなくなってしまいました。ドラマも映画もセリフを追うことしかできないから、昔みたいに感情移入ができません。」
この他にも、音楽の音質については「鈍い、くすんだ、ぼやける、こもる、薄い、冷たい」といったネガティブな印象が語られてきました。
○音楽固有の処理方式の必要性
音楽の音声信号は会話音の音声信号と異なる音響的な特徴を持っています。音のダイナミクス(強弱・抑揚)、周波数特性、その他の点においても異なります。当たり前ですが、会話音を聞きとるために目標としていること(=主に内容の理解)、音楽を聴くために目標としていること(=楽しむこと)も異なります。
↑音の種類(縦軸:周波数 横軸:時間)
=ミュージック(音楽)が騒音と似ていて、騒音下でのスピーチ(会話音)とは近似している事がわかります。従来、この違いを補聴器が「聞き分け」ることは困難でした。
2016年のスターキーの新製品はこの分類を90%以上正確に聞き分けることができます。
今まで補聴器の会話音の処理方式は、音楽を聴く目的と対立してきました。
会話音の処理方式が音楽の音質を劣化させてしまうので、難聴のために音楽の音質劣化にフラストレーションを感じざるをえませんでした。
そこでスターキーはこれまでの補聴器業界の処理方式から離れ、
音楽固有の処理方式をゼロから開発し始めました。
○会話音と音楽を個別に同時並行処理できるツインコンプレッサー
2016年4月25日に発売された新しいSynergyプラットフォーム搭載のライフデザイン補聴器Muse(ミューズ)、スマートワイヤレス補聴器Halo2(ヘイロー2)、オトレンズ・シナジーの新製品は技術的な解決策を提供しています。
補聴器の歴史上初めて、補聴器ユーザーは楽曲にとって、聞いてほしい、ありのままの形で音楽を聞くことができます。
Synergy®はツインコンプレッサーの技術を使用した初めての補聴器プラットフォームです。 各々のコンプレッサーが同時に入ってきた音を処理することができます。つまり、片方のコンプレッサーが音声を、もう片方が音楽を処理するといったように、同時に作動できます。
現在スターキーは、このツインコンプレッサー技術だけが唯一、音を忠実に同時並行処理することができると考えています。 音楽を聴くために設計された機能によって、音楽はクリアで明確になり、何よりも楽しめる音質で再現されます。高いサンプリングレートを達成したことで補聴器の調整周波数幅も10000Hzまで拡張し、音楽の音質をより豊かで充実したサウンドに仕上げています。
この技術開発が結果として、音楽聴取時だけでなく、言葉の理解はもちろん、生活を楽しむための補聴器として製品化することができたのです。
次回はその音楽専用の処理方式を開発した裏側を覗いていこうと思います。
※第2回目の技術寄稿はこちらからご覧いただけます。