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【6月6日は補聴器の日】補聴器のAI活用は、どのように進化(エボルブ)してきたのか?

6月6日は補聴器の日。現在の補聴器のトレンドというべき「AI補聴器」について深堀してみましょう。今や充電式補聴器の流行とともに、補聴器最新技術のトレンドともいえる「AI補聴器」。実は補聴器は長くAI(人工知能)を利用した製品開発をしてきました。

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イギリス補聴器工業会(BIHIMA)が2022年5月23日に公開したスターキーのチーフ・イノベーション・オフィサー(CIO)デーブ・フェイブリー博士へのインタビューを通して、補聴器におけるAI(人工知能)がどのようにかかわり、これまで進化(エボルブ)してきたのか、そして今後、AI補聴器はどこへ向かっていくのかについてお伝えします。

 

スターキーCIO デーブ・フェイブリー(スターキーCIO デーブ・フェイブリー博士)

 

人工知能が補聴器に使われたのはいつから?



BIHIMA:

補聴器に人工知能(AI)が使われるようになったのはいつ頃ですか?

デーブ・フェイブリー博士(以下、デーブ):

私はオーディオロジストで、40年近くこの業界にいます。補聴器にAIを使うようになったのは、15年前くらいからでしょうか。それまでは、静かな環境でも騒がしい環境でも使える補聴器を提供するために、ユーザーが補聴器を操作できる複数の手動プログラムを用意し、例えば指向性マイクを作動させるなどをしていました。

AIは、アナログからデジタルに移行した後に導入されました。最初のデジタル補聴器は、90年代半ばに発売されましたね。

 

AI補聴器の進化

 

BIHIMA:

補聴器におけるAIの利用は、時代とともにどのように変化してきましたか?

デーブ:

2000年代前半から半ばにかけて、私たちは機械学習を利用し、音響環境分類(AEC)を利用し、学習させることができる補聴器を見かけるようになり、ユーザーが静かな聴取環境から騒がしい聴取環境に移行すると、自動的にその特定の環境に適した指向性とノイズ管理を補聴器が取り入れることができるようになりました。

課題は、自動的な処理によってユーザーエクスペリエンス(顧客体験)はよくなったものの、音声は重要な信号である一方、騒音も含むため、分類精度が80〜85%程度にとどまることでした。

また、聴く相手や内容を選択する際に、人が持つ意図と同じものを補聴器が持つことは非常に困難です。例えば、ギターを持った大道芸人の演奏を聴きたいと思った場合、それは興味のある信号となりますが、通りすがりの人が会話をしていて、大道芸人の演奏を聴きたくない場合、その音楽はノイズとなります。しかし、補聴器にはそれが自動的にわからないのです。

そこで、AIとユーザーの意図を組み合わせることで、次世代の補聴器が生まれるのです。この10年間で、補聴器の使われ方は飛躍的に進歩しました。

私たち補聴器業界の関係者にとって、決定的な出来事は、最初のiPhone用補聴器が開発された2014年だと思います。補聴器が単一目的の機器から、音声やその他の音を増幅して聞き取りやすくし、背景雑音を低減し、ユーザーがアプリを使って音量の上げ下げや補聴器の基本機能をコントロールできる多目的・多機能の機器に移行し始めたのはまさにそれが始まりだったのです。

product-halo2-ric-312(スターキー初のMade for iPhone(MFi)補聴器 Haloと専用アプリTruLink)

 

2018年(国内では2019年)には、耳かけ型(BTE)およびカナル型(RIC)機器に埋め込まれたセンサーを初めて導入しました。2020年1月(国内では2020年6月)、スターキーは「エッジモード」と呼ぶ機能を搭載した製品を発売しました。例えば、レストランにいて前の人に話しかけようとしているときに、後ろに騒がしい人がいた場合、ユーザーはスマートフォンのアプリを使わずに補聴器を2回タップするだけで、周囲の音響スキャン(音声と騒音、さらには音楽の空間位置定位)が行われ、補聴器は目の前の信号を優先して聞き取りやすさを向上させることができるのです。

つまり、自動的な環境処理とユーザーの意図の組み合わせ、つまり人間と機械の利点を組み合わせたものです。



2020年4月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によりマスクの着用が始まりましたが、エッジモードは読唇ができないときに声をクリアにし、コミュニケーションを取りやすくすることができると、ユーザーから好評を得ました。当初はスターキーも思いがけない使い方でしたが、とてもうまくいったと思います。エッジモードは、音質と音声の明瞭度のためにAIを使用し、ノイズがあるときだけ指向性マイクをオンにします。

 

Evolv AI Mask Mode

オンデマンドAI調整「エッジモード」を搭載したEvolv AI(エボルブ)はマスク

での聴き取りづらさも考慮して調整してくれる



Bluetoothでのワイヤレス接続により、補聴器業界は、優れた性能と審美上のメリットを併せ持つアクセサリーを開発することができました。

 

 

AI補聴器のユーザーへの恩恵は?


BIHIMA:

補聴器にAIを搭載することで、ユーザーエクスペリエンス(顧客体験)にどのような影響があるのでしょうか。

デーブ:

補聴器業界は、ユーザーの心身全体の健康状態をモニタリングし、改善するためにAIを使用する旅に出ています。補聴器に組み込まれたセンサーは、社会的な関与、身体活動、転倒検知をモニタリングすることができます。

補聴器へのAI活用は、聞き取りやすさ、音質、聞き心地を改善するだけでなく、健康全般をサポートし、ユーザーに安心感を与えるために利用されています。

AIは、人が転倒したときに何が起こるかという具体的なサインを監視することができます。スターキーの補聴器は、転倒が発生した場合、ユーザーが指定した連絡先にテキストメッセージを送信し、その連絡先に警告を発します。補聴器ユーザーは、これらがいつ送信されたのか、そしてその人がメッセージを開いたかどうかを知ることができます。メッセージを受け取った人は、返信がない場合、転倒した人の位置を物理的に特定することができるので、ユーザーだけでなく、介護者や家族にも安心感を与えることができます。

 

また、AIはリアルタイム翻訳にも活用できます。理解できない言語で誰かと会話している場合、相手の言葉をそのまま耳元で翻訳してもらうことができます。

また、関節症など手先の不自由な方のために、リアルタイムで文字起こしをする機能もあります。さらに、補聴器が音声認識を行い、その方に代わってメッセージを送ることもできます。

高齢社会では、複数の服薬をしている人できちんと医者から言われたタイミング、量を服薬している人は50%未満と言われています。スターキーは、ユーザーが適切なタイミングで薬を飲めるように、AIアシスタントにリマインダーをプログラムすることができます。

また、スライブケアというアプリもあります。補聴器ユーザーが選んだ人(例えば家族)にリンクを送ると、その人がユーザーの活動や社会参加(ユーザーが選択した場合)をモニターし、家族にもユーザーにも安心感を与えることができるのです。

BIHIMA:

補聴器にAIを搭載することで、調整スタッフ*はどのような恩恵を受けるのでしょうか?

 

デーブ:

私たちが知っていることのひとつは、遠隔調整の可能性です。遠隔調整機能は以前からありましたが、パンデミックまではそれほど利用されていませんでした。パンデミック以降、遠隔医療の利用は劇的に増加しました。以前は、高齢者はテクノロジーを使えない、あるいは使いたくないと思われていたかもしれませんが、人々はテクノロジーをとてもよく受け入れ、高齢者層におけるテクノロジーの利用は劇的に増加しました。

聴力測定の予約の約3分の1は、単純な微調整のために行われていましたが、多くの場合、遠隔調整機能によって同じように簡単に処理することができ、ユーザーの移動時間を節約し、スタッフの時間を節約することができます。

まだ現役で働いていて、過去に簡単な調整のために休みを取りたくなかったユーザーは、最適とは言えない補聴器調整で生活していたかもしれません。遠隔調整機能は、調整スタッフが補聴器の音響パラメータをより良く最適化することを可能にします。

私たちは、遠隔調整に関する考え方を広めていかなければなりません。スターキーは、補聴器ユーザーがアプリ内で使用できるセルフチェック診断機能も実装しています。これは、補聴器内のマイク、回路、レシーバー、さらにはセンサーの機能を瞬時にテストし、機能しているかいないかを確かめる機能です。調整スタッフも、すべての構成部品が機能しているかどうかを修理を検討する前に知ることができるというメリットがあります。

補聴器のデータログは、ユーザーが補聴器をどのように使用しているかを知るためのスナップショットを調整スタッフに提供します。また、スタッフはユーザーが何回転倒したかを知ることができるので、ユーザーの記憶に頼ることなく、転倒の危険性についてユーザーと話し合うことができます。このデータは、繊細な健康問題に関する会話を生産的なものに変え、転倒を回避するための予防策を議論することができます。AIによって、調整スタッフはそのユーザーの生活を大きな視野で捉え、聴覚だけでなく全体的な健康やウェルネスとの関連性に目を向けながら、ユーザーのケアに全体的なアプローチを提供することができるようになるのです。

 


AI補聴器の今後の進化は?

BIHIMA:

将来的には、聴覚ケアにおけるAIの利用はどのように進化していくとお考えでしょうか?

デーブ:

現在、補聴器の回路で耳で使える以上の演算能力を持つアプリケーションに取り組んでいます。

iPhoneユーザー向けに、「ボイスAI」という機能があります。これは、耳元で使える以上のコンピューティングパワーとバッテリー寿命を持ち、ディープニューラルネットワーク(DNN)技術を用いて、スマートフォンの演算能力を追加で使って、音質や騒音の中での音声理解をより向上させるための機能です。現在は、より高度難聴のiPhoneユーザー向けで、処理の一部が補聴器の外部へ依存するため、iPhoneが機器に接続されている必要があります。私たちの次世代製品では、補聴器本体で処理を行えるため、iPhoneユーザーに限定されることはないでしょう。

私たちは、自動化やAIと人間の知能の組み合わせが、最高のリスニングエクスペリエンス(聴取体験)を提供できると考え続けています。長期的にも、できるだけストレスフリーで楽なソリューションを提供しようと考えています。将来的には、できるだけ多くのものを補聴器に搭載することですが、もちろん常に聞き取りやすさと音質を第一に考えています。

コモディティ化できないものは聴覚ケアであり、これらの開発はすべて、スタッフがよりホリスティック(聴覚(一部)だけでなく健康全般(全体))な方法でユーザーをケアするのに役立つことでしょう。


BIHIMAについて
BIHIMA(British Irish Hearing Instrument Manufacturers Association)は、イギリスとアイルランドの補聴器メーカーを代表し、ヘルスケアおよびチャリティー分野における他の専門家、業界、規制、消費者団体と連携して活動しています。最新の聴覚技術に関する消費者の意識を高め、聴覚障害を持つ人々の生活を向上させるために政府や政策立案者に影響を与えることを目指しています。

出典:オーディオ・インフォUK発行No. 148、2022年5月~6月号

 

原文はこちらをご覧ください。

 

 

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