(2025年7月15日更新)
「体調管理」と聞いて、何を思い浮かべますか?
定期的な運動、半年に一度の歯科検診、8時間の睡眠、栄養バランスの取れた食事...。どれも健康を保つために欠かせない習慣です。では、「きこえの管理」と聞くとどうでしょうか?健康診断の聴力測定を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは『定期的な耳掃除』ではないでしょうか?
今回は、私たちが日常的にできる、簡単で耳の健康につながるお手入れ方法についてお話しします。
まず最初に、ひとつの誤解を解きたいと思います。
多くの人は、「耳あか=不潔で気持ち悪いもの」と思いがちです。でも、それは大きな誤解です!実は耳あかには、とても大切な役割があります。
・外耳道(耳の穴の中)の皮膚を保護する。
・耳の中の汚れを自然に外に運び出し、皮膚が乾かないように守ってくれる
・バクテリアやカビ、水分や虫の侵入といった外的な刺激から耳を守る
つまり、耳あかは「耳の健康を守るために必要なもの」なのです。
「耳あか=汚い、全部取らなきゃ」と思っていた方は、どうぞ今日からそのイメージを少しだけ変えてみてください。
実は、耳には自浄作用があり、ほとんどの人は耳掃除をする必要はありません。
耳にとって一番大切なのは、「耳かきや綿棒など、細く鋭いものを耳の中に入れないこと」です。耳あかは耳の奥ではなく、耳の入り口付近でつくられます。そのままにしておけば、会話や食事などであごを動かすことで、自然に外へと押し出されれる仕組みになっています。
綿棒や耳かきで耳の奥まで掃除しようとすると、耳あかをかえって奥に押し込んでしまったり、外耳道や鼓膜を傷つけてしまうリスクがあります。そのため、耳掃除は無理に行わず、耳の自然な自浄作用に任せて、お風呂やシャワーの後に耳の外側(外耳)をタオルや柔らかいティッシュなどで軽く拭く程度にとどめることがオススメです。
耳垢栓塞とは、耳あかが外耳道にたまり、固まってふさがれてしまう状態を指します。本来、耳あかは耳を保護する役割を果たしますが、過剰にたまったり、耳掃除などで奥に押し込まれたりすると、耳の自然な自浄作用を妨げてしまうことがあります。
・耳閉感(耳が詰まったような感覚)
・耳の痛み
・きこえの低下やきこえづらさ
・かゆみ、におい、分泌物
・咳(耳の神経が刺激されることによる反射)
このような症状がある場合、耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。もしも、耳あかが原因の場合は、耳鼻科の医師が安全に耳あかを取り除いてくれます。自分で無理に対処しようとすると、耳の中を傷つけてしまうことがあるため、専門の医師による処置が安心です。
耳あかが多くなった、耳あかが溜まっていると感じたら、以下の方法で「耳垢栓塞」を予防しましょう。
・耳あかを柔らかくする:耳あかが硬くて取れにくいときは、綿棒に少量のミネラルオイルやベビーオイルをつけて耳の入り口をやさしくお手入れしてみましょう。これにより耳あかが柔らかくなり、自然と耳の外に出やすくなります。ただし無理に奥までお手入れをしようとせず、あくまでも入り口付近だけにとどめることが大切です。
・耳鼻科を予約する:耳あかの予防策としてもっともお勧めしたいのは、耳鼻科医で定期的に耳あかを除去してもらうことです。例えば3か月~半年に一度のペースで受講することで、耳の健康チェックにもつながります。
耳あかが溜まることで、補聴器の性能が十分に発揮されなくなることがあります。
補聴器を装用されている方はご存じかもしれませんが、耳あかが補聴器のマイク(音の入り口)やレシーバー(音の出口)をふさいでしまうと、音質や性能に悪影響を与えます。その結果、音がこもったり、聞えづらくなったりして補聴器の効果が半減してしまうのです。さらに、耳あかが原因で補聴器の故障や修理が必要になることもあります。
補聴器の装用を始めてから、「耳あかが増えた気がする」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。実はこれは珍しいことではありません。補聴器は自然に耳の外へと移動するのを物理的にブロックしてしまう、また外耳道にある汗腺を刺激することで、耳あかの分泌を促してしまうことがあります。
補聴器を清潔に保ち、正しくお手入れすることは、快適な聞こえを保つうえでとても大切です。補聴器を外した後耳の外側をタオルなどでふき取りましょう。また補聴器本体に耳あかやほこりが付いているときは、柔らかい布、付属のブラシや綿棒を使い優しく取り除いてください。
その他、こちらの記事も耳あかや耳掃除について記載しています。
きこえの低下が気になる方、また補聴器を検討されている方は、補聴器販売店(認定補聴器技能者や専門スタッフ)にご相談ください。郵便番号を入力いただくと、補聴器のご紹介や試聴などが可能なお近くの補聴器専門店リストを表示します。(補聴器の試聴には費用がかかる場合があります。)ご自身の耳で、補聴器の聞こえを確かめてみませんか?
まずはきこえが気になる場合、オンラインで5分でできる「きこえのチェック」を試してみましょう。そのうえで気になる点があれば耳鼻咽喉科へご相談ください。
ご自身の耳の状態について相談できる方がいない場合、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が公開している全国の補聴器相談医リストを確認してみてください。
当該コンテンツは、2025年7月に更新を行いました。