2007年、米国において、ベター・ヒアリング・インスティテュート(BHI:聴覚専門の非営利機関)が「未治療の難聴が世帯収入に与える影響(The impact of Untreated Hearing Loss)」という報告書を発表しました。この報告書には、世帯主を補聴器を装用している難聴者、補聴器を装用していない難聴者、そして健聴者の3タイプに分類して4万世帯を調査し、抽出されたデータが分析されています。
また、報告書では、効果的な意思疎通が困難、失業、仕事の成果に影響する可能性が高い身体的・精神的な健康問題を含め、いくつかの要因が収入格差に関連づけられているとも報告されています。
日本ではどうなのでしょうか?残念ながら、逸失利益の推定など具体的な金額に関しては分かりませんでしたが、意識調査による主観的なデータは存在します。
補聴器工業会で発表されたJAPAN TRAK2015には、補聴器所有者(装用者)と非所有者(非装用者)の報酬(収入)に対するデータが、仕事の有意性に関する項目として記載(34ページ)されています。「私は難聴の対策をとっていない人達の報酬が低い傾向にあると思う」という質問に「そう思う」と回答している人の割合は、補聴器所有者が22%、非所有者は13%です。また、「そう思わない」と回答している人は、補聴器所有者が27%、非所有者は47%でした。この結果から以下を読み取ることができます。
・補聴器所有者は、補聴器の装用を通して、仕事において高い報酬を得ることを認識している
・補聴器非所有者は、補聴器の装用が収入格差に関連することに気づいていない
また、別の質問では、何らかの仕事に従事している補聴器装用者のうち、補聴器が仕事上で役に立っていると回答している人が90%にものぼっています。2012年にも同様の調査が行われていますが、仕事に役立っていると回答している補聴器装用者は2012年の88%から上昇しています。
年金受給年齢が引き上げられ、定年退職後も仕事を続ける団塊世代が多くなったこともあり、仕事をされている方で補聴器の必要性を感じる人も増えてきています。最近では全く目立たない補聴器もある為、補聴器に対する抵抗感も昔ほどでは無くなってきているとも言えます。
仕事の有意性も含め、貴方のQOL(生活の質)を高めるためにも、不必要な障害はできるだけ取り除いた方が良いと思いませんか?
難聴に対して、将来を見越した積極的な取り組みが必要かもしれません。「最近、聞き取りが悪くなったような気がする」等、少しでも気になる症状があるようでしたら、きこえのチェックをしてみましょう!また、具体的な悩みがあるようでしたら、きこえの専門家(補聴器相談医や補聴器販売店)へのご相談もぜひご検討ください。
難聴と健康についてまとめられたオンラインガイドは下記よりダウンロードすることができます。