2012年のニューヨーク・タイムズの記事「孤独の高い代償」はこのうような文章から始まります:
「孤独はあらゆる年代の人々を傷つけます。特に、高齢者には、孤独感が健康に深刻な影響を与え、身体機能の低下や余命短縮の危険性が上昇します。」
この記事に関しては、60歳以上を対象とした孤独の影響に関して、6年間に渡るカルフォルニア大学サンフランシスコ校の研究において引き続き論じられてきました。この研究は医学論文としても公表され、孤独感が身体機能(風呂、着衣、食事、起床等を行う)の低下や死の予兆に繋がると結論付けられました。6年間に渡る研究で、孤独を感じている被験者は、孤独を感じていない高齢者よりも45%以上死亡する可能性が高かまったのです。
難聴と孤独感には多くの関係性があります
難聴が孤独感の原因になる経緯は想像しやすいと思います。人は社会的な生き物であり、もしも他者とのコミュニケーションを難しく感じると、難聴者は交流を最小限にすることを選び、誘いを断りがちになり、自身を社会から遠ざけようとします。社会からの「孤立」と「孤独」では意味が異なり*、「孤立」は「孤独」の前兆となります。
最新の研究で、補聴器を使用することで孤独感が和らぐことが分かっています
2015年、アメリカ・ニューヨーク州とオーストリアの研究者が、補聴器装用により難聴の高齢者が感じている孤独感が減少するかどうか調査を開始し、その結果を米国聴覚医学会誌(2016年3月号)に発表しました。
この中で、研究者は「補聴器使用の開始から4週間~6週間で、孤独の感じ方に著しい変化がみられた」とし、「補聴器の使用が孤独を経験する上の緩衝材になっている」と締めくくっています。
社会的孤立や孤独感の一因と考えられる難聴を患う高齢者にとって、この研究結果は見通しを明るくするものでした。補聴器によって孤独感が軽減され、精神的かつ身体的健康により良い効果を与えると発表されたのです。
聴覚障害を補聴器で補うことで身体的、社会的な恩恵を受けられることをご存知でしたか?
この事実を周囲の人に伝えることで、多くの人を助けることができるかもしれません。
「聴力測定に一緒に行ってみませんか?」と提案してみるのも良いかもしれません:
ニューヨークタイムズの記事 "The High Price of Loneliness"をお読みになりたい方はこちら。
カルフォルニア大学の研究 "Loneliness in Older Persons"についてお読みになりたい方はこちら。
2015年の研究 "Relating Hearing Aid Use to Social and Emotional Loneliness in Older Adults"の概要を知りたい方はこちら。
*社会的つながりがあるか、維持しているかどうかなどの視点の社会的な孤立と違って、孤独感は主観的なものです。孤独とは一つの感情です。この感情は結婚していたり、他者と深く関わっている人でさえも生じることがあるのです。