「発見プロセス」は、補聴器の効果を評価するためのプロセスの一部です。
発見プロセスは、補聴器ユーザーとその家族のニーズと心配事を理解するために使用されます。また、家族の心配の深刻さに対するユーザーの意識を高め、ユーザーを拒否から受容と行動に移すのに役立てることができます。
補聴器の選択が決まった後でも、発見プロセスは終わりません。発見プロセスはフィッティングやその後のフォローアップにも大変重要です。この記事ではフォローアップの際の発見プロセスについてご紹介します。
困難を理解する
常にユーザーを中心に考えましょう。ジョーンズ氏は彼の最初のフォローアップのために販売店を訪れました。彼はオトレンズ・シナジーiQ2400を両耳に装用しています。彼の補聴器に対して持っていた期待と違うことは何かと尋ねると、彼は「ある種の会話に、ついていくのが難しいこと」と答えました。発見プロセスはこうした状況で役に立ちます。我々の言う発見プロセスとは、「5W1H」とも呼ばれます。誰が、何を、どこで、いつ、なぜ、どのように。これらの質問が、ユーザーの困難をより良く理解するのに役立ちます。これらの質問を使用することは、最善の行動を決定する重要な第一歩です!
質問を重ねて分析しましょう
Who(誰が?)
話し相手は誰ですか?話し相手が一人の場合と何人かのグループの場合ではアプローチが異なります。同様に、子供の場合と大人の場合のアプローチも異なる可能性があります。その他の重要な質問としては、よく聞こえる声がありますか?聞き取りに苦労する特定の相手がいますか?その人の声は他の人も理解するのに苦労していますか?これらの質問の答えによっては、補聴器の調整を検討する前にカウンセリングを選択することがあります。
What(何を?)
他に困難なことはありますか?聴き取りの困難は常にあるのですか?それとも騒々しいグループがあなたの近くに座った時だけでしょうか?困難を和らげるためにはどんなことが役立つと思いますか?ユーザーの周囲の環境と、それがユーザーの困難にどのように影響しているかについて、出来るだけ多くの情報を収集することが重要です。
When(いつ?)
他にどんな時に、困難な経験をしたことがありますか?それは今お話しされた状況だけですか?それとも他に似た経験をした状況がありましたか?この質問によって聴き取りについての困難の影響の大きさを把握することができます。環境が多いほど困難が広がり、影響が大きくなります。
Where(どこで?)
あなたが困難を感じるのは、どんな場所にいる時ですか?自宅のキッチンと騒がしいレストランでは全く違います。座る場所はどんな所ですか?丸いテーブルに座っているのか、長いテーブルなのか、自分の背後に壁があるか、テーブルの位置はバーやキッチンの近くにあるか。これらの情報がすべて、環境を理解するのに役立ちます。そしてこれらを理解することで、補聴器ユーザーにお勧めする内容をより適切なものにすることが出来ます。
Why(なぜ?)
何故あなたは困難を感じるのですか?なぜあなたは影響を受けるのでしょうか?「なぜ?」を質問することで、それが本当に本人の困難であるか、単なるコメントであるかをよりよく理解できるようになります。ユーザーは単に観察したことを述べているだけの事もあります。ユーザーの困難の原因でないものを調整しようとするのではなく、ユーザーにとって最も困難で影響の大きい領域に優先順位をつけるのです。
How(どれくらい?)
困難を感じる頻度はどれくらいですか?毎日なのか、週に一度なのか、月に一度なのか。頻度に関する情報は、困難に取り組む際の指針を与えてくれます。月に一度であれば、毎日の使用に悪影響を与えないような配慮が必要なように、調整方法や推奨事項は場合によって違ってきます。
より良い理解のために
適切な質問をした後は、静かに答えを聞く必要があります。状況についての先入観を取り除いてユーザーの話を聞くのは最も難しいことの一つかもしれません。
ジョーンズ氏の「ある種の会話に、ついていくのが難しい」に話を戻しましょう。
Q.困難を感じるのは、何処で誰と話している時ですか?
――「オフィスでチームのメンバーと話している時に、会話についていけない時があります。」
Q.あなたが会話についていけない時の状況を詳しく話していただけますか?
――「上手く言えませんが、彼らが話していることが良く聞こえないとしか言いようがありません。」
Q.それは会議室の中ですか?
――「いいえ、私たちはパーティション(仕切り)の中にいて、そこで彼らが話し始めます。」
Q.状況を絵に描いていただけますか?
これは大変重要です。会議室とパーティションでは助けになる事が全く異なるからです。オフィスの構造や困難な状況の頻度によっては、補聴器の調整ではなくカウンセリングが必要な可能性もあります。例えば、パーティションのこちら側にいて同僚の話を聞くのではなく彼らの机まで行って話しかけるように助言するかもしれません。
何をすべきか、どのようにユーザーへのカウンセリングを行えば良いか。それを知るには、質問を通してユーザーの困難な状況を理解することです。私たちの一番のツールは、的確な質問と十分な傾聴なのです。
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