突然ですが、みなさんはスターキーきこえの財団をご存じでしょうか。
スターキーは、「Starkey Hearing Technologies(スターキー・ヒアリング・テクノロジーズ)」と「Starkey Hearing Foundation(スターキー・ヒアリング・ファンデーション)」で構成されており、前者は補聴器の製造・研究・開発などを主に行っていて、後者がスターキーきこえの財団になります。ちなみに、スターキージャパンは「Starkey Hearing Technologies」の日本法人にあたります。
なのでスターキージャパン社内でも実際のところ、スターキーきこえの財団の詳細についてはその内部や多くは語られてきていませんでした。補聴器装用者でもある私、西川は「スターキーきこえの財団のことをもっと知りたい!」の一心で、アメリカ・ミネアポリスにあるオフィスに訪問してきました!
スターキーきこえの財団オフィスの外観
きこえの財団は、テノロジーズとは別の場所にオフィスを構えています。
オフィスに入ると、大きな世界地図がお出迎え!
今回、西川を案内してくれたエミリーさん(左)とジャッキーさん(右)
まず、2人が見せてくれたのは実際に、きこえの不自由な人たちに届けている補聴器でした。
きこえの財団の活動はWFA®地域密着型ヒアリング・ヘルスケア・プログラムに則り、フェーズ1からフェーズ4の段階に分けて行われます。
フェーズ1では、「聴力測定や印象採取」が行われます。国によっては、400名もの聞こえに不自由している方に1日で対応しなくてはいけないこともあるそうです。その場合には、印象採取を全て行うことは現実的に難しく、既製のイヤモールドで対応しているそうです。(写真はスターキーが誇るカスタマイズ技術を活かした既製イヤモールドです)
配布される補聴器は1~10のパワー別に分けられており、パワーレベル1が軽度、パワーレベル10が重度になるそうです。(ちなみにこれらの補聴器は全てデジタル補聴器です)
フェーズ2では出来上がった印象採取の耳型を使い、現地で補聴器の「フィッテイング(調整)」を行います。
フェーズ2では、クリントン元大統領やブッシュ元大統領、ジョニー・デップなどの著名人が参加されることもあります。この様子はスターキーきこえの財団のYouTubeチャンネルで紹介されています。
フェーズ3は、「アフターケア」になります。補聴器の調整だけでなく、補聴器をちゃんと使えているか?などの確認を行うそうです。アフターケアは1度だけで終わらず、現地の病院や福祉課の人達と連携して、この先もずっと行っていくとのことです。
次に行われるフェーズ4では「実生活に活かす」活動を行います。装用者の中には、補聴器を装用して初めて音を聞いた人たちも大勢います。補聴器から聞こえてくる「音」を通して「言葉」を覚える訓練などを行うそうです。ここでは、アメリカのAuD(Audiologist:オージオロジスト)やSLP(Speech Language Pathologist:言語聴覚士)の方たちが、その地域のろう学校など先生たちと協力して訓練を行っていきます。
先生たちの奮闘の様子↑
ジャッキーさんは、「私達が補聴器を届けても現地の病院のスタッフや福祉課の人、ろう学校の先生方の協力がないと意味がない。だからこそ、WFA®※地域密着型ヒアリング・ヘルスケア・プログラムは大切です」と教えてくれました。
(※WFAはスターキーの創設者であるWilliam F. Ausitin(ウィリアム・F・オースティン、通称:ビル)の頭文字から取っています)
エミリーさんは、「発展途上国、とくにアフリカでは、聞こえに不自由している人達が何億人といます。この何億という人たちに「きこえ」を届けるには、私達きこえの財団メンバーだけでケアすることが難しいのが現状です。そこで、ザンビアに設立したのがStarkey Hearing Institute(スターキーきこえの学校)なのです。この学校は、現地で補聴器のケアが出来るプロフェッショナルを育成しています。現時点ではアフリカ諸国出身の生徒がほとんどですが、世界中の補聴器のプロフェッショナルの卵がザンビアで学習しています。私達は2030年までに2億人のアフリカに住む聞こえに不自由している人を助けることを目標としています」と教えてくれました。
2017年度に行われた第1期生の卒業式の様子。中央に創設者のビル・オースティン、タニ・オースティン夫妻がいます。エミリーさんによると、現在約60名の生徒が在学しているとのこと
2012年のWHOの発表により、世界の3億6000万人の人々が40dBHL以上の難聴で、そのうち80%の人々が専門家にアクセスできない地域に住んでいることが分かりました。
スターキーきこえの財団は、その人たちに補聴器を届けるために不要になった補聴器の寄付を必要としています。
ジャッキーさんは、実際に寄付された補聴器を見せてくれました。
きこえの財団に届いた補聴器
ジャッキーさんによると、これは1週間で、きこえの財団に届いたものだそうです!届いた補聴器は耳かけ型・耳あな型・ポケット型などに選別され、スターキー・ヒアリング・テクノロジーズで分解され、きこえの財団用の補聴器が組み立てられていくとのことです。
補聴器リサイクル活動に関するリーフレットは下記ボタンをクリックしてください。
寄付される補聴器はどのメーカーの補聴器でも、故障していても構わないそうです。「使わなくなった・動かなくなった・役目を果たした補聴器が、遠い国の誰かのために、また活躍すると思うとワクワクしない?」とジャッキーさんはキラキラした目で説明してくれました。
また、スターキー製の補聴器を購入いただいた場合、その購入代金の一部をこのようなスターキーきこえの財団の援助資金として寄付されています。なので、ジャッキーさんは「私たちがこの活動を続けていけるのは、世界中のスターキーユーザーの支えがあるからなの」と教えてくれました。
現在、補聴器の寄付量は、圧倒的にアメリカ国内から届けられることが多いそうですが、
スターキージャパンから2018年10月までにきこえの財団に贈られた補聴器の台数は下記になります。
<日本から寄付された補聴器の台数(2018年度)>
ITE (耳あな型) |
BTE (耳かけ型) |
BOX* (箱型) |
BONE (骨導) |
|
合計 | 292 | 194 | 22 | 1 |
*箱型補聴器については通関トラブルを避けるため、今後お受付することができませんのでご注意ください。
このブログを読んでいただいている方の中に、使えなくなった補聴器をお持ちの方がおられましたら、お近くのスターキー取扱店にお持ち寄りいただくか、スターキージャパンにご相談下さい)
ジャッキーさんは「World needs your POWER.(世界はあなたの力を必要としています)」と日本の皆さんに伝えて欲しいと強く語っていました。
今回の訪問で、きこえの財団の活動・取り組み内容だけでなく、実際に現地に届けている補聴器や寄付された補聴器を見ることが出来ました。
スターキージャパンもこの活動へ今後さらなる貢献ができるように、日本の皆様へ活動の大切さを伝えていきます。
きこえの財団に関するパンフレットはこちら↑