スターキーアメリカ本社で行われているポッドキャストコンテンツから、
CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)アーチン・ボーミック博士が業界最小ワイヤレスCIC312の開発秘話をCIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)デイブ・フェイブリーとの会話から解説させていただきます。
CIOデイブ(左)とCTOアーチン(右)
世界最小ワイヤレス製品
ワイヤレスCIC312を投入したスターキー
デイブ:
私が手にしているこのCICは、スマートフォンに直接接続できるもので、AndroidやiPhoneに直接接続できるこれほど小さな製品をスターキーは世界で初めて発表しました、エボルブの大きな成果です。インテルから来たあなたは、この計算能力と、これを実現するために必要なバッテリーの大きさ、さらに耳から耳へ通信するためのアンテナのことは十分に理解していないのではないですか?(笑)
アーチン:
(笑)それではエンジニアとして、私からその複雑さを説明させてください。
なぜ、このデバイスを出荷しているのがスターキーだけで、他社がやれていないのか。
カスタムメイド(オーダーメイド)の補聴器は、できるだけ小さく、目立たないようにしたい。ただ同時に、iPhoneやAndroid携帯と直接Bluetooth接続し、電話やオーディオブックのストリーミングを楽しみたいものですよね。
それが難しいのはなぜか?人間の身体は水で満たされているからです。
その結果、Bluetoothは2.4ギガヘルツの電波なので実によく吸収してしまいます。
これが食べ物を温める電子レンジが2.4ギガヘルツを使って加熱する理由です。食べ物に含まれる水分子がその周波数をよく吸収し、共鳴して振動、物を温めるんですね。
残念ながら、電波が発生するものを耳の奥まで入れると、頭に吸収されてしまい、携帯電話に信号を伝えるための電波が届かなくなってしまうのです。
アンテナ設計チームにとってこれは非常に難しい問題でした。結果として、小さな取り出しテグスをアンテナとして利用することで、デバイスを小さく目立たないようにしながらも、Bluetoothの電波を出してスマートフォンに接続し、直接オーディオストリーミングができるだけでなく、一方の補聴器を操作して同じ指示をもう一方に伝える両耳間通信も可能にする素晴らしい設計をしました。
補聴器の世界でも、このように限界に挑戦しています。そして、私たちは... スターキー創業者のビルが何10年にもわたって行ってきた伝統を引き継いでいます。
ワイヤレスCIC312
ワイヤレスCIC312と
相性抜群なワイヤレスアクセサリー
デイブ:
ビルは、補聴器の音響カスタマイズだけでなく、快適な装用感、外観の美しさ、小型化など、さらなるニーズにも着目し、そのためのロードマップを提供しました。
そして、もうひとつのポイントは、ユーザーがCIC312などの小型形状を希望する場合、多くのケースでプロフェッショナルはITC(カナル型)補聴器を勧めてきたということです。なぜなら、CICなどの小型補聴器には指向性マイクが搭載されていないからです。しかし、スターキーがテーブルマイクやその他のワイヤレスアクセサリーで実現したのは、ビームフォーミングマイクでこれが非常に高度な処理を可能にしています。
CIC312のような小型で外観が美しいデバイスと組み合わせることで、専門家とユーザーが妥協することなく、両方の利点を得ることができるようになりました。今、スマートフォンに直接接続できる小型のカスタムデバイスで、騒がしい環境や教室、講義などで、リモートマイク+(プラス)の利点も利用することができます。
アーチン:
そうですね。これは、人間の知覚に関わることです。聴覚が正常な方は、自然な指向性感覚を使って、自分にとって興味のない信号をカットしています。機械学習ではなく、自然学習に基づいて信号の内容を理解するため、指向性のある信号を得て、頭の中で信号処理をすることができるのです。テーブルマイクは、聴覚の衰えによって失われがちな方向感覚を、後押ししてくれます。8~10デシベルもの指向性を高めることができます。
デイブ:
補聴器に付いている指向性マイクが提供できる以上のものです。
8~10デシベルもの追加効果があります。
現在、スターキーが提供する全ワイヤレスアクセサリー
アーチン:
騒がしい環境で相手の声が聞こえないのと、
よく聞こえて言っていることが理解できるのとでは、
雲泥の差ですよね。
デイブ:
これは超能力の話にもなってきます。
難聴の度合いにも応じますが、ユーザーは健聴者よりも優れた能力を発揮することができるようにもなります。
アーチン:
そうですね。ビームフォーミングや信号処理などの技術と、Bluetooth接続のオーディオストリーミングができる耳あな型補聴器を組み合わせることで、人が本来できるよりも優れたパフォーマンスを発揮できる奇跡を起こすことができます。
実際、超人的な聴力は、単に聴力を向上させるだけでなく、健常者よりも優れた聴力を可能にする寸前にまで来ているという話をしてきました。
iPhoneの完全ハンズフリー通話を最初に実現したスターキー
Appleとの強い協力関係
デイブ:
確かに、テーブルマイクやリモートマイク+などを使えば、騒音や困難な聴取環境での性能を犠牲にすることなく、小さなCIC312などの形状も選択することができますね。
もうひとつ、CICについてお話します。それは、iPhoneユーザー向けに最近追加した補聴器のマイクを使って、私が話しているときの声を拾うことができる「ハンズフリー通話」というものです。これは電話の向こう側にいる人にとって、本当にありがたい機能です。補聴器ユーザーにとっては、真のハンズフリーが可能になりました。もう私はスマホのマイクに向かって話す必要はありません。しかし、これは通話相手にもメリットがあり、私の声がより良い品質で聞こえるようになります。
アーチン:
この機能は、強い要望がありました。2012年、13年、14年に、iPhoneやAndroid携帯の音声を補聴器にストリーミングできるようにした最初の補聴器を開発したとき、補聴器の価値が上がったことを、私はあなたたちから学びました。
次のステップは、補聴器のマイクを双方向に接続できるようにすることでした。補聴器マイクで通話できるので、スマホを別の場所に置いていても話ができます。もう完全にスマホを手に持つ必要はありませんね。
スターキーは、このハンズフリー技術対応の補聴器を発表した最初の企業です。
Appleとのパートナーシップが証明しています。AppleのアクセシビリティプログラムのディレクターがStarkey Expo(隔年で開催されているスターキー本社のイベント)に参加し、協力関係でどのようなことに取り組んでいるか話してくれました。彼女は、スターキーとの協力関係がこのような機能の追加になることはその時はまだ語りませんでした。これは、補聴器業界でのAppleとのコラボレーションの最初の成果です。
デイブ:
アクセシビリティに対するAppleの取り組みと、難聴の方のためのこの分野でのスターキーの知識との、深い協力関係の賜物ですね。
アーチン:
はい。そして、私たちはまだまだ多くのことを進めていきますので、ユーザーの皆さんは、私たちが次の機能をリリースするのを待つだけでいいのです。
いかがでしたか?
スターキーの最新補聴器Evolv AIにつながるストーリーは今後も更新します。