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トピック

【まとめ】補聴器の広告規制について

補聴器は管理医療機器クラスⅡに分類される医療機器です。

 

医療機器のため、国が安全性を認可しており、消費税が非課税、最近では適切な手順にしたがって購入すれば医療費控除なども受けることができるなどメリットと考える部分も多くありますが、その反面、厳しく規制もされています。

 

今回はその規制の一つ、広告規制についてご案内します。

 

Red Ring Binder with Inscription Guidelines on Background of Working Table with Office Supplies, Laptop, Reports. Toned Illustration. Business Concept on Blurred Background.

 

薬機法 と 補聴器の適正広告・ガイドライン


医療機器の広告規制について最も拠り所となる法律が薬機法医薬品医療機器等法と呼ばれる「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(旧:薬事法)です。

 

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」

医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の品質と有効性および安全性を確保するため、製造から販売、市販後の安全対策まで一貫した規制を行い定められている法律。(厚生労働省・都道府県の薬事監視員が取締り

 

ここに先ほど記したクラス分類(安全性に関する影響によって分類)などが説明されており、この第66条~68条に医療機器の広告規制が定められています。特筆すべきは、この規制対象が「何人も」と制限が設けられていないこと、また2021年8月から罰則規定となる課徴金制度も導入され、さらに規制が厳しくなっていることです。

 

何人も

広告を行った新聞社、雑誌社等はもちろん個人にも適用

 

課徴金制度の導入(2021年8月1日より)

課徴金対象期間中における該当商品売上高の4.5%を課徴金として納付​

(以前は個人・法人ともに最高200万円)

 

このような規制を遵守し、補聴器の品位、信用を損なうことがないように、自主的に補聴器の関連団体(日本補聴器工業会と日本補聴器販売店協会)で設けたものが「補聴器の適正広告・ガイドライン」です。

 

日本の補聴器業界に関わる方はこのガイドラインを守ることが薬機法を守ると同義になると理解いただいていいでしょう。

 

補聴器の広告に関しては、このガイドラインを見れば薬機法だけでなく、補聴器販売に関する景品表示法や消費者契約法などあらゆる法律を遵守した活動をすることができます。

 

 

広告の範囲(薬機法 広告3要件 と ガイドラインの理解)

 

関連法規を把握したところで、そもそも法律上の広告とは何を指すのかを見ていきます。

 

薬機法では以下の3要件すべてを満たすものについて「広告」とみなされています。

 

1. 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること

2. ​特定医薬品等(この場合、補聴器)の商品名が明らかにされていること

3.​ 一般人が認知できる状態であること 

 

薬機法の表現をそのまま捉えると、商品名を表示しなければよいのでは?、3要件にあてはまらなければ大丈夫 と解釈されがちですが、ガイドラインを策定した業界団体では商品写真を掲載すれば特定の商品とみなし、3要件すべてを満たしていなくても総合的な見方をするという見解が発表されています。

 

日本補聴器工業会(JHIMA)法制倫理委員会の見解

・当該商品の写真掲載は商品名が明らかにされていることと同じに判断します。

・商品機種を複数有するブランド名は、商品名とは判断しません。

・当該商品と特定できないイラスト等の掲載は、商品名が明らかにされているとは判断しません。

 

薬機法で定める禁止事項

 

それではガイドラインの元になっている薬機法で禁止されていることは何なのでしょうか?補聴器に関することだけを抜粋してみると、第66条、第68条になるようです。

 

誇大広告虚偽または誇大、医師等の推薦)と未承認製品の広告が補聴器関連の禁止事項として捉えることができます。この中で誇大広告という表現が個人によって隔たりのある表現になっており、これが業界でガイドラインを制定している主な要因と考えられます。

 

(誇大広告等)
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
 
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

 

 

ガイドラインで定める禁止事項

 

薬機法の表現では曖昧になりがちな誇大広告。それをより具体的に示したものが業界団体が策定したガイドラインです。どのような表現が規制対象となっているのでしょうか。注意したい表現カテゴリを下記にまとめました。具体的な禁止表現はすべて例示できませんが、かなり多岐にわたることがわかります。

 

ガイドライン上の注意したい表現カテゴリ

・製造方法の優秀性に関する最大級表現​
・材料、形状、構造について効能効果、安全性の事実に反する誤認をまねく表現​
・操作方法・使用方法について効能効果、安全性の事実に反する誤認をまねく表現​
・効能効果・安全性を保証する表現

・効能効果・安全性の歴史的表現

・臨床データ例示

・使用前後の図面、写真

・副作用等の表現​
・使用体験談での効能効果、安全性に関連する表現​
・効能効果・安全性の最大級表現​
・本来の効能効果と認められない表現​
・乱用助長を促す表現

・他社の誹謗・比較表現

・医療関係者等の推薦・特許の表現

・不快、不安にさせる表現

・聴力測定に関する表現

 

特に昨今問題になりやすい禁止表現


多岐にわたる表現カテゴリの中から近年特に取り沙汰されるカテゴリとその禁止表現を抜粋してご紹介します。

 

効能効果・安全性に関する表現

 

上記の表現カテゴリ内でも多く出てくる効能効果・安全性の表現について、特に補聴器の広告では注意しなければいけません。きこえの状態は人それぞれで異なり、目に見えて示せるものではありません。だから万人にあてはまるような誤った表現は控えるべきだと考えると適切な表現にできるかもしれません。また優良誤認となる最大級の表現も控えるべきとされています。

 

認められない表現例

最大級、強力表現の例

「最高、世界一、業界をリードする、補聴器革命、抜群、最高峰」 、「強力、強い」 

安全性の保証の例

「世界で愛され○年、きわめて安全、臨床データから、有効性が実証、副作用がない」 

補聴器本来の効能効果ではない表現

「ストレス解消、若返る、心がスッキリ、認知症予防、耳鳴りの不快感を軽減」 

不快もしくは不安をあおる表現

「放っておくと…、つけずにいると…、手遅れになる前に…、思い当たりませんか」 

 

それではどう表現したらいいのでしょうか?

効能効果・安全性に関する表現をする場合は断定を避けるようにと言われています。

 

× 快適に聞こえる → 〇 快適な聞こえが可能

 

使用体験談

 

上記の効能効果・安全性について記述したことに最も関連して近年取り沙汰されているのが体験談です。多くのメーカーやお店で利用される使用体験談はその中で個人の効能効果や安全性に関する表現をすることはできません。

 

認められない表現例

・会話はもちろん、テレビやラジオを楽しく聴くことができます。 

・話の輪に安心して入れます。本当に聞き取りが楽になりました。

・補聴器をつけるまでは、会話に苦労しました。 

 

それではどんな表現をすればいいのでしょうか?

体験談では「使用感」に関することのみで、補聴器の効能効果である「聞こえ」に関する言及はできません。しかし、使用感から派生して、現在のメーカー広告などを精査してみると「抽象的な個人の意見」なら一部で認められるようです。

 

認められる表現例

「小さくて助かる。」

「明るいデザインで良かった。」

「(形状が)小さい。かっこいい。」

「積極的になれた。元の自分を取り戻した。」
「音って重要、聞こえは人生に大切」
「世界が変わった」
「着ける前は遠慮しちゃう自分がいた」

 

その他、補聴器のお店で利用できる体験談の例については日本補聴器販売店協会が発行している体験談広告についてがとてもまとまっていてわかりやすいので参考にしてください。

 

 

耳鳴り・認知症との関連

 

耳鳴り機能は補聴器に付随していても日本国内では治療音として調整・利用するためには耳鼻科医師の診断が必要となっている通り、耳鳴りと関連付けた補聴器の広告はできません。

 

また同じようにランセット委員会の発表で大きく話題になった認知症と難聴の関連性にについても、それが補聴器で解決できる、補聴器で予防になるという主旨の広告は出すことができません。これは難聴に対処する現在最も有効な手段が補聴器であるという本来の医療機器としての効果効能を飛び越え、補聴器が認知症に直接、効果効能があるような誤認を与えてしまうことを避けるためです。あくまで認知症を予防するために対処できる最大の危険因子の一つが難聴であり、それ以上の言及はできません。

 

 

まとめ 補聴器の広告規制について

 

一般的に補聴器の広告に触れることが少なかったり、

 

「もっとこんな広告を出したらいいのに・・・」

「私のツイートのコメントにいいねやリツイートしてくれないのはなぜ?」

 

と感じていた補聴器ユーザーの方もいるかもしれませんが、その背景には補聴器にまつわる広告規制が厳しく存在していることを理解いただけたのではないでしょうか。

 

取扱店の皆様の中には、これだけ多くの禁止事項が設定されていると、「薬機法・ガイドラインが怖くて、広告したりSNSを実施できない」と嘆かれる方も多いでしょう。

 

しかし、そもそもこのようなガイドラインがある理由を考えてみれば自ずと対処方法は見えてくるかもしません。それは、お客様である消費者、補聴器ユーザーの方々を守るためなのですから。

 

ガイドラインはその制定の背景に、補聴器が適切に届いていないと考えられる消費者センターへの苦情件数の増加などの状況が続いていることがあります。かといって、消費者は補聴器ではない音響機器を補聴器と捉えて苦情をされていたり、難聴というコミュニケーションの弊害から正確な情報が伝わらずに起きてしまっている状況も伺えます。

 

事実を脚色なくそのまま伝える誠実さであったり、他社やその他製品との比較を明示しない礼節さであったり、広告としての情報提供は最小限になってしまうかもしれませんが、まだ一般的に知られることが少ない補聴器についての大切な情報を各メディアで伝えていただけるように業界全体を通して働きかけていくことが大事だと思います。

 

そのためにも消費者の方を必要以上に惑わせたり、誤認させるような著しく事実と異なる表現は業界内でも注意していくことは必要です。適正な情報発信を通してつながることで補聴器業界を盛り上げていきましょう。

 

よほど悪質なものに対しては是正するための行動は必要ですが、意図的ではないと考えられるものについては疑問に感じた方からまずは優しく指摘してあげたいものですね。

 

 

補聴器の広告規制 これから

 

補聴器は医療機器といえど医家向け医療機器には該当しません。その上、補聴器の選択にあたって、必要な正しい情報をご使用になるユーザーが入手できることは望ましいという考え方もあり、医療機器等の広告規制については内閣府の規制改革の実施事項として見直しも考えられているようです。

 

規制が緩和されたとしてもSNSなどがこれだけ発達し、情報が蔓延している社会では、正しい情報の選択はより難しくなっています。補聴器ではない規制対象とならない商品が広告を自由に出してしまっている実態もあるからです。

 

どこまでも補聴器ユーザーの皆様の立場を考えて行動することが求められていることは今後も変わらないですね。

 

 

お近くの補聴器の販売店探し、お手伝いします。

 

補聴器の広告規制については、特に関連団体に所属していない取扱店には補聴器メーカーから指導するようにと、現在スターキージャパンも所属する日本補聴器工業会から依頼されてもいます。

 

ここに郵便番号を入力するだけで、スターキーの補聴器技術を紹介、試聴可能なお近くの補聴器専門店リストを表示します。(補聴器の試聴には費用がかかる場合があります。)補聴器がどのように役立つのか、ご自身の耳で確かめてみませんか?

 

すぐにお店に行けない場合は、オンラインで5分で終わる聞こえのチェックをしてみましょう。

 

またご自身の耳の状態について相談できる方がいない場合、日本耳鼻咽喉科学会が掲載している全国の補聴器相談医リストを確認してみてください。

 

 

参考リンク

補聴器の適正広告・表示ガイドライン第4版 日本補聴器工業会、日本補聴器販売店協会 2022年改定

補聴器トラブルを防ぎましょう! 独立行政法人 国民生活センター 2021年2月25日

貴店の お客様の声 は、薬機法に違反していませんか? 日本補聴器販売店協会 2022年6月

 

 

 

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