(2025年8月22日更新)
電車や飛行機での移動中、あるいはカフェやオフィスでのひと時。自分のヘッドホンを持ち歩くのが日常の風景になってきました。ノイズキャンセリングや高音質など、耳へのこだわりが高まっている今、「イヤホンの衛生面」について考えたことはありますか?今回は耳の健康という視点から、イヤホンの使い方や、誰かと共有しても大丈夫なのかなど、日常で気を付けたいポイントを見ていきたいと思います。
イヤホンを持ち歩くということは、それだけさまざまな場所に触れる機会が増えるということでもあります。デスクの上、飛行機のトレイテーブル、バッグの中…。日常の中で、イヤホンがどんな環境に置かれているかを意識することは少ないかもしれません。
ある研究では、「イヤホンを使うだけで耳の中の細菌がおおよそ11倍に増える」という結果も報告されています。これは、イヤホンを装着することで耳の中に湿気と熱がこもり、細菌が繁殖しやすい環境ができてしまうためです。特に密閉型のイヤホンや長時間の使用は耳の中の通気性の低下につながります。
細菌はNG、でも耳垢は味方です
ありがたいことに、私たちの耳には細菌から守ってくれる”天然のバリア”があります。それが耳垢(みみあか)です。ふとみるとイヤホンに耳垢が付着していることがあるかもしれません。実はそれこそが、耳あかが耳を守るために働いてくれている証なのです。
誰の耳にも耳垢がありますが、耳垢は無害で、むしろとても役に立つ存在です。耳の中を清潔を保ち、保護し、潤いを守る働きも持っています。もし耳垢がなかったら、耳の中が乾燥して私たちは痒みに悩まされるでしょう。
さらに耳垢は、耳の奥にある鼓膜を、ホコリや異物から守る役割も果たしています。耳垢は、耳の外側にある「アポクリン腺」という汗腺に似た器官から分泌されます。実はこの腺、ストレスや緊張によって汗が増えるのと同様に、ストレスを感じると耳垢も増えるという、ちょっと意外な事実もあります。
感染が起こる可能性は低いですが、ゼロではありません!
イヤホンの共用が安全かどうかについては、報告によって見解が分かれるところですが、米国のBusiness Insider誌は2019年に、コロンビア大学の微生物学研究所において行なった調査では、22セットの耳の中に入れるタイプのイヤホンを使い、どれくらい清潔なのか調べました。その結果、多くのサンプルからは、皮膚に存在する一般的な細菌(黄色ブドウ球菌など)が検出され、研究者の予想通りの結果となりました。しかし、驚きの結果もありました。2つのサンプルからは酵母菌が検出されました。酵母菌は真菌(かび)の一種で、耳の中で感染症を引き起こす可能性があります。
イヤホンを共用することで、耳の環境が変化し、衛生面で注意が必要になることがあります。耳に入り込む可能性のある細菌の多くは無害とされていますが、共有によって耳のなかの微生物の種類が増えることがあり、衛生状態によっては中耳炎や外耳炎などのトラブルにつながる可能性もあるとされています。
特に、耳の中に小さな傷がある場合、共用によって皮膚トラブルにつながることもあるため、使用前後の衛生管理には注意が必要です。また、耳のお手入れについても正しい知識を持っていただくことも大切です。
自分用のイヤホンを携帯しましょう
ここまでお伝えしてきた理由からも、イヤホンの共用は避けることをおすすめします。どうしても誰かと共用しなければならない場合は、まず除菌用のウエットティッシュなどを使って、イヤホン表面の耳垢やほこりなどの目に見える汚れを拭き取り、目に見えない細菌についてもできるだけ取り除いてください。
イヤホンとの付き合い方、少しだけ意識してみませんか?
たとえば、着用前には手を洗ってからイヤホンを触ること。そして、使用後には充電ケースなどにしまう前に、イヤホンをしっかり乾かすこと。こうしたちょっとした習慣が、イヤホンを清潔に保ち、より長く快適に使い続けるための一助になります。なお、イヤホンのお手入れは製品によっても異なる場合があります。この機会に、ユーザーガイドなどを確認してみるのもよいでしょう。
補聴器のお手入れ方法が参考になることもあるかもしれません。例えば欧州補聴器専門家協会では、補聴器やイヤホンの衛生管理に関するガイドライン(英文)を発表しています。同ガイドラインでは、オーディオ機器は個人専用の使用を推奨するとともに、共有する場合は、使い捨てカバーやパーツ交換を行うこと、また定期的な消毒や素材の確認(アレルギー対策)などが明記されています。
お気に入りのイヤホンを、これからも気持ちよく使っていくために。今日からできる小さなケア、始めてみませんか?
本ブログ記事は、アメリカ本社の記事をもとに、日本市場向けに一部内容を調整したものです。一般的な情報提供を目的として掲載しています。