スターキーアメリカ本社で行われているポッドキャストコンテンツから、
CHO(チーフ・ヘルスー・オフィサー:最高衛生責任者)アーケル・ジョルジョ医師が新型コロナウイルス感染症(以下、COVID)が蔓延した2020年初期を振り返り、聴覚の大切さをCIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)デイブ・フェイブリーと解説させていただきます。
CIOデイブ(左)とCHOアーケル(右)
パンデミック前に
補聴器業界初のCHO(最高衛生責任者)に就任
デイブ:
あなたがこの業界に入ったのは、非常に興味深い時期でした。あなたがその前から、スターキーのコンサルティングをしていたことは知っています。あなたは、2020年1月、補聴器業界初、唯一のCHO(チーフ・ヘルス・オフィサー)最高衛生責任者としてフルタイムで入社することが正式に発表されました。
その後2020年内に新型コロナウイルス感染症のパンデミックが待ち受けていることを、私たちは考えてもいなかったでしょう。
チーフ・ヘルス・オフィサーとしての役割とその意味、
そして輝かしいキャリアを持つあなたがなぜ聴覚ケアに加わることになったのか、
話していただけますか?
アーケル:
発表は本当にエキサイティングでした。それまでの半年間、CEOブランドン・サワリッチから、チーフ・ヘルス・オフィサーとしてフルタイムで就任してほしいと打診されてきました。彼がこれほどまでに未来を見通すことができることに感動しました。私の役割に入る前に、少しその前の話をさせてください。
スターキーは、2017年の時点で、聴覚と医療が表裏一体なことを見抜いていました。そして2017年、インテルから新しいCTO(最高技術責任者)のアーチン・ボーミックを迎えました。アーチンは、センサーとAI(人工知能)を活用することで、補聴器を単なる補聴器ではなく、ヒアラブルデバイスとして設計し直し、再発明するという新しい考え方の先駆けとなりました。ただ聴覚と健康を同時に扱うには、健康に関する専門知識が必要なのです。
2020年に入社した私は、ヘルスケアの専門知識を携えてきました。私の役割は毎日作り上げるもので、ユニークです。社内向けの責任と社外向けの責任があります。
社内向けの責任としては、私はエンジニアと密接に協力して、臨床的に意義のある健康的なテクノロジーを設計・検討することを確認することです。
エンジニアはとても優秀で、何でもできるんですが、問題は、何を設計するか?人々の生活に本当に貢献できるものは何なのか?が重要なんです。
そのために、彼らと密接に協力しています。
一方、社外に向けての私の責任と情熱は、多くの壇上に立つことで、聴覚ケア業界が医療において果たすべき重要な役割を認識いただくこと、そして、より多くの人々の生活を向上させることです。
ヘルスケア医療業界は、聴覚が人の健康全般にとって、いかに重要であるかを理解しています。
ヘルサブル(健康志向)テクノロジーの
価値を測定すること
デイブ:
お話にあったように、CTOのアーチンは、補聴器を単一目的(「聴くため」)のデバイスから、身体活動だけでなく社会的関与も追跡できるセンサーを組み込んだ多目的デバイスへの方向性を示しました。あなたが当社に入社いただいたのは非常に重要なタイミングでした。その背景を理解し、製品を調整する店舗スタッフ様だけでなく、最終的に装用するエンドユーザー様のために、専門的知識を提供することに貢献しています。
アーケル:
「なぜ」が重要ですね。多くの人が戦略を立て、ロードマップを設計しますが、なぜそれが患者さんにとって重要なのか、常に患者さんを前面に話をすることを、私は常に心がけています。
補聴器業界唯一のユーザーみまもりアプリ「スライブケア」は補聴器内蔵のセンサーでより正確な健康情報をモニタリングできる
もうひとつは、私がヘルスケアに長く携わってきたこと、特にユナイテッド・ヘルスケアに15年間勤務していたことを活かして、Healthable™テクノロジーのその価値を評価できるようにすることです。価値を測定し、その影響を証明できなければいけません。測定できなければ、普及できず、コミュニティが採用することも期待できません。
測定は私が考えるもうひとつの重要な責務だと思います。
マスク生活が教えてくれたこと
デイブ:
補聴器の第一の仕事は静かな場所でも騒がしい場所でも、音声の聞き取りやすさと音質を向上させることです。
しかし、おっしゃるように、COVIDが流行する前からわかっていたことかもしれませんが、この1年間で難聴と孤独感、うつ病、孤立感との間に多くの関連性や共存性があることがわかりました。難聴に関連する健康問題について、少しお話しいただけますか。
1月からのあなたの最初の役割は、多くの点でCOVIDのチーフオフィサーに変わったと思います。しかし、そこから、多くの人が今まで当たり前と思ってた、他の人とつながるための聴覚の本質を学ぶことができたと思います。COVID初期に、 聴覚が生活する上でいかに重要であるかを、専門家全体に理解してもらう必要があることに気づかされました。特にCOVIDでは、マスクをしていたので、そのことがよくわかりましたよね。
アーケル:
軽度難聴者でも、会話やコミュニケーション、聴力に大きな支障があることに気づきました。というのも、デイブは私よりもよく知っていますね。あなたが研究を行っていたので、私はそれを引用しただけですが、マスクは外科用マスクや布製マスクでさえ、4~5dBの可聴性を低下させます。それがKN95マスクになると、7、8、9dBにもなったんですね。
軽度難聴者であっても、マスクのせいで中等度難聴になり、会話に参加できなくなったり、聞こえなくなったりすることがありました。私たちの仕事のすべてがオンライン化され、Zoom会議が行われるようになると、同僚の声やオンラインでのプレゼンテーションが聞こえないために、どれだけの人がパフォーマンスを発揮できなかったか。
デイブ:
はい、マスクによる聴覚損失は見逃せませんね。多くの人は相手を理解する為に情報の40%まで読唇術と顔の合図から得ているわけですから当然です。さらに、話に対する相手の反応を見ることで、多くのニュアンスや会話が生まれます。相手が話についてきているのか、それとも聞き流しているのか、分かるでしょう。
そして、社会的な距離の取り方、人と人との距離の取り方と、マスクによる音の聞こえにくさ、視覚的な手がかりの喪失が相まって、軽度難聴の人たちの意識も低下してしまいました。今では、マスクをしている人に初めて出会い、それでいかにコミュニケーションに苦労するかを実感もしていますよね。
アーケル:
私はいつも、どんな状況でもポジティブに考えるようにしています。COVIDは世界にとって大きな悲劇でしたが、COVIDが気づかせてくれたことの1つは、難聴がうつ病や不安、孤独、社会的孤立と関連していることを証明してくれたことです。
これまで難聴はほとんど語られることのなかった問題でしたが、今はより話題になってきています。COVIDがもたらすポジティブな効果の1つであったと思っています。
コロナが教えてくれたセレンディピティ
デイブ:
難聴は人生のどの時期にも起こりうるものですが、高齢になるほど難聴になる確率は高くなりますからね。パンデミックの初期に最も被害を受けやすかったのは、高齢の方々でした。そして、多くの場合、医療施設にいる聴覚専門医や補聴器販売店で診てもらうことができなかったり、訪問を嫌がっていました。
ですから、パンデミックの初期段階では、スターキーでたくさんの補聴器を作ることができたとしても、人々の耳に届けることができず、業界全体としても2020年の第2四半期は80%近く販売が落ち込みました。しかし、2020年後半から2021年にかけては轟々と回復していきました。
当初は「自分はいったい何をしているのだろう?という疑問がありました。
しかし、おっしゃるように、パンデミックを通じて、聴力やその本質に気づき、感謝するようになったのです。
アーケル:
面白いですよね。
ウィンストン・チャーチルは、「良い危機を決して無駄にするな」と言いました。
私たちは危機的状況にありましたし、それとともに生きることを学んでいるようなものです。しかし、2020年初頭、売上が大幅に減少しても、業界自体が必要不可欠かどうかを疑問視していても、私は一瞬たりともこの業界に入った決断を疑ったことはありませんでした。
なぜなら、あの危機的状況がなければ、「聴覚は不可欠であり、その理由はここにある」と言えるようになるまでに、どれだけの時間がかかったことでしょう。
私は世界をバラ色のレンズで見ているだけかもしれませんが、あの時期に入社したことは完璧なタイミングであり、セレンディピティだと思いました。
個人的な観点からも、仕事上の観点からも、スターキーの素晴らしい人や業界の方たちに出会うには、2倍から3倍の時間がかかったと思います。なぜなら、どんな新しい仕事でも、足元を固め、誰が誰なのかを見極めなければならないからです。
毎週人前に出るわけではありませんが、私たちは一緒に仕事をしていたので、タウンホールやカスタマーフォーラムを開催していましたね。そのおかげで、サービスを提供するお客さまは私のことを知り、また、お客さまは私のことを知っていただけたと思います。
いかがでしたか?
スターキーの最新補聴器Evolv AIにつながるストーリーは今後も更新していきます。