
子どもは、大人が呆れてしまうほど何時間も走り回って遊んでいるイメージがあります。その元気な姿を見ると疲れとは無縁なようにも感じられます。でも、難聴の子どもは少し違います。学校生活を送るだけでヘトヘトに疲れ、家に帰ったらベッドやソファに横になりたいと思っています。子どもは一般的にエネルギッシュなので、普通に接していると、多くの大人が「この子は難聴かもしれない」と思うことは少ないでしょう。むしろ、疲れている姿を見て、「無気力な子」と思うかもしれません。
ここに、ある統計データがあります。米国疾病対策センター(CDC)では1988年から94年まで全米各地で大規模な調査を行い、6~19歳の子供の約15%が、片耳または両耳の聴力が、低音域または高音域で、健聴児の聴力よりも、少なくとも16dB下回っていることが分かりました。その後、追跡調査として数年間に渡り、学童期から自分自身が難聴であることを認識していた21~25歳の青年を調査したところ、以下のことが分かっています:
・青年難聴者の40%が、学童期から日常生活を送る上で自分自身の心身機能に1つ以上の不便さを感じている。
・関連疾患(知的障害、脳性まひ、てんかん、視覚障害など)を発症していない青年難聴者の約70%は就労している。つまり、残りの約30%は、難聴であることが原因で就労していないということになる。
この調査では、難聴児が大学や専門学校などの高等学校以降に教育を受けることを選択しない傾向にあることも示唆しており、難聴児自身が成人としての社会的役割を習得する為にも、教育を継続することは必要であると報告しています。但し、その為には、難聴児に対して周りの大人が早期介入することが必要であると結論付けています。
過去ブログでもお伝えした通り、「聞く」という行為は、難聴者をひどく疲れさせます( 詳しくは、難聴と疲労感 Part1をご覧ください)。しかし、疲労感を受容できる大人と異なり、子どもは疲れた時に正直にそれを伝えることに不安を覚えます。
なぜなら、大人に自分が怠けたいからそのように言っていると思われたくないからです。学校の先生が生徒に難聴があることを忘れていたり、難聴がどのように子供に影響しているかを知らなかったり、理解していなかったりすると、難聴児が学校生活を送る上で大きな問題に発展する可能性があります。場合によっては、先生が誤って「やる気のない子」というレッテルを貼ることにもなりかねません。もし、両親が子どもの難聴に気付いていないとしたら、子どもは本当にやる気を失くしてしまうことでしょう。実際、難聴の子どもはクラスメイトの誰よりも懸命に頑張っているのです。
補聴器は、子供が聞き取りや集中力に費やす精神的な負担を軽減させます。難聴を早期に発見して補聴器を装用することで、補聴器が現状の「きこえ」を維持する手助けになります。だからこそ、周りの大人による早期発見・早期介入はとても重要です。子どもに難聴の兆候が見られるようなら、直ぐにきこえの専門家である補聴器相談医(日本耳鼻咽喉科学会から全国の相談医リストが公開されています)の先生に診ていただくことや、補聴器専門店に相談することが必要です。
子どもの難聴の一般的な兆候
・授業中や放課後に疲労感が募り、午後になると居眠りをしてしまう。
・忘れ物が多くなった。
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・話していることに理解が少ない。
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・学校での成績に問題が生じている(特に、読解力に注意してあげてください)。
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・テレビのボリュームを上げたり、テレビ画面を間近で見る頻度が高い。
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・名前を呼んでも返事をしない。
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・他の人がやっていることをマネする為に周りを見るようになる。
- もしも、お子様が軽度から中等度の難聴(30dB~70dB)であることが分かったら、先ずは、お住まいの市町村の担当窓口に補聴器購入の補助制度があるかどうかをご確認ください。多くの自治体で、きこえに不自由を感じているお子様の為に助成制度を設けています。助成制度の内容は各自治体で異なりますので、詳しくはお住まいの市町村の担当窓口にお問い合わせください。
スターキーでは、一般的な補聴器に加え、総合支援法対応の補聴器も豊富に取り揃えております。補聴器についてのご相談はスターキージャパンまでお問い合わせください。
難聴と疲労感 Part1:聴力の低下によって、からだは疲れています
難聴と疲労感 Part3:職場における危険性