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難聴と認知能力の低下 Part2

私たちの誰もが、家族や友人との良好な関係を築くことで、物事に前向きになったり、生活に満足感を得ています。そして、このことが日々の生活に欠かせないQOL(生活の質)の重要な要素であるとも言えます。認知機能の低下により、この相互関係を保つ能力が損なわれると、生活の質にも支障が生じます。加齢による物忘れや記憶力の低下から、高齢者が認知症やアルツハイマー病に懸念を抱くことも不思議ではありません。

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2010年、メットライフ財団(アメリカの大手保険会社)が、市場調査会社に委託して、健康に関する大規模な調査を行いました。この調査から、「アメリカ人にとってアルツハイマー病がガンに次いで2番目に恐れられている病気である」ことが分かりました。ベビー・ブーマー(団塊の世代)を代表する1946年生まれの人々が、「補聴器を最初に購入する平均年齢」と言われています。難聴と認知症の関係性についての研究結果も多く報告されてきています。ベビー・ブーマー世代がその関係性に関して医師に相談することは不思議ではありません。

 

フランク・リン博士(ジョンズ・ホプキンズ大学、医学部准教授)は、2013年の研究調査で「難聴が認知機能低下を加速させるが、認知障害は地域社会に暮らす高齢者の誰にでも起こりうる」と報告しています。これは、難聴者の方が健聴者よりも認知症を発症しやすいことは分かっていますが、その因果関係は分からないということを意味しています

 

しかし、リン博士はこうも言っています。「研究結果から、難聴は加齢によって起こる ”とるに足らない現象” と考えてはいけません。なぜなら、健康的な脳の機能へ長期に渡り深刻な影響を伴う可能性があるからです。」(Johns Hopkins Medicine, 2013).

 

さらに、最新の研究報告では、健聴者に比べて難聴者には、脳の言語プロセスの部分に委縮が多く見られています。リン博士は、こう続けます。「難聴を上手く対処したいのであれば、すぐにでも対処した方が良いでしょう。難聴がMRIで確認された脳の委縮に潜在的に原因しているのであれば、このような脳の構造変化が起こる前に、誰もが難聴を予防したいと思うでしょう。」(Johns Hopkins Medicine, 2014).

 

難聴の最も一般的な治療法は、適切に調整された補聴器を使用することです。しかし、残念ながら、様々な理由から治療に対するアドバイスに従う気になれず、「きこえ」の不自由を感じた後、何年もの間、治療を先送りにしてしまう傾向があります。(Davis et al., 2007).

 

難聴治療を先延ばしにした場合の影響について、ある学術的な評論記事では記載されています。「”聞こえにくさ”は生活の質(QOL)の低下を引き起こします。それは、人を孤立させ、社会活動が少なくさせ、疎外感を生み、うつ症状を悪化させる原因になります。」(Stig Arlinger, 2003)

 

私たちは、時として、専門的な診断や治療が不要とされる慢性的な健康問題に向かい合います(Cook & Hawkins, 2006)。この慢性的な健康問題の一つに「加齢による難聴」があります。幸いにも、加齢性難聴は、必ずしも医学的な治療が必要な健康状態ではなく、補聴器により効果的な治療ができる状態です。家族や友人などの大切な存在が、きこえの専門家と一緒に治療に関わることで、難聴に悩むご本人が思っている以上に補聴器の効果をもたらすことができるでしょう。

 

過去の関連記事:

難聴と認知能力の低下 

難聴と認知症の関係について

 

参考文献

Arlinger, S. (2003). Negative consequences of uncorrected hearing loss — a review. International Journal of Audiology, 42(2), S17–2 S20.

Cook, J. A. & Hawkins, D. B. (2006). Hearing loss and hearing aid treatment options. Mayo Clinic Proceedings, 81(2), 234–237.

Davis, A., Smith, P., Ferguson, M., Stephens, D., & Gianopoulos, I. (2007). Acceptability, benefit and costs of early screening for hearing disability: A study of potential screening tests and models. Health Technology Assessment, 11, 1–294.

Johns Hopkins Medicine. (2013). Hearing Loss Accelerates Brain Function Decline in Older Adults. Retrieved from: http://www.hopkinsmedicine.org/news/media/releases/
hearing_loss_accelerates_brain_function_decline_in_older_adults.

Johns Hopkins Medicine. (2014). Hearing Loss Linked to Accelerated Brain Tissue Loss. Retrieved from: http://www.hopkinsmedicine.org/news/media/

Lin, F. R., Yaffe, K., Xia, J., Xue, Q., Harris, T., Purchase-Helzner, E., … Simonsick, E. (2013). Hearing Loss and Cognitive Decline in Older Adults. JAMA Internal Medicine, 173(4), 293-299.

MetLife Foundation. (2011). What America Thinks: MetLife Foundation Alzheimer’s’ Survey. Harris Interactive. 

By: Dennis Van Vliet, Au.D.

トピック: 難聴と健康